VOL.46「痛みはとれても治っていない治療中断の危機」
- 院長コラム
最近は、歯に対する意識が向上したこともあり、「定期的に受診」「冷たい物がしみる」などで早期に歯科医院を訪れる人が増えました。しかし、相変わらず「痛くなって」「がまんできずに」受診する方も多いようです。
そうなると「むし歯が大きく、詰めるだけでは治りません。『神経』を取りましょう」ということになりかねません。麻酔をし、神経をとって、「では来週」と予約をとって帰るという経験をした方もいらっしゃるでしょう。
そして、二、三日して痛みを感じなくなると、予約は気になるものの、仕事の忙しさにかまけて歯科医院から遠のいてしまう…。
しかし皆さん、神経を取ってそのままにしておくのは、とても危険なのです。神経を取ったあとは人工物で密封しなければなりません。そのままにしておくと神経のあった空間にバイ菌が入り込み、歯の根の部分にウミがたまってしまいます。そうなると歯を抜かざるを得なくなることが多いのです。
また、歯型をとって金属やプラスチックで被せ物などを作り、次回いよいよ装着、という段階で中断してしまう人もいます。間に合わせの仮歯で、「これでいいや」と思ってしまうのでしょう。でも、ピッタリ合わせて作った物とは違い、あくまでも仮の歯に過ぎません。歯との段差があるためにバイ菌が入ってむし歯になりやすく、予後が心配です。
歯の表面は硬いエナメル質で覆われ、その内側には象牙質、さらに内側に神経と呼ばれる歯髄があります。歯髄は細かい神経組織と血管からなるもので、歯に栄養を与え、痛みを感じるのもこの部分です。このような役割のある神経を取ってしまった歯は、十分な栄養が与えられないためにもろくなり、強い力で噛むと折れてしまうことがあります。
また、その歯の別の部分がむし歯になっても、神経がないので痛みを感じることがなく、手遅れになってしまう可能性が高くなります。
むし歯になってしまったのは仕方ないにしても、神経を取ったままにしたり、仮歯のままで生活を続けるのはやめ、最後まで治療を終わらせましょう。